山採り時代の理想形。 "直幹に始まって、直幹に終る"という言葉が鉢植え界にはあります。 これは、鉢植えのもっとも奥深い味わいを直幹がもっていることを示しています。 かつて、山採り素材が鉢植えの主流を占めていた時代には、端整な樹姿で、幹を中心に平均に枝の付いた直幹樹形は鉢植えの理想形とされていました。 これは、山採り素材のなかにはそうした理想的な素材がほとんどなかったためであり、まれにそうした可能性をもった素材が得られた場合には、貴重なものとされていたからです。 ただし、山採りの直幹素材の場合には、枝付きの欠点があっても、それを補ってあまりある風格と風情をもつものがありました。 挿木による素材の生産技術が発達してきました。 この生産技術の発達は、従来理想とされた幹の周囲にまんべんなく枝付きのある素材の供給を容易にし、鉢植え界に多くの直幹素材が親られるようになりました。 また、接ぎ枝技術の発達も、こうした傾向に拍車をかけるようになってきました。 このように、素材をつくる段階から直幹としての理想形を意識したものが量産されるようになると、そのあまりにも端整な姿ゆえに、逆に面自味に欠けるという印象が一般に浸透してきているきらいもあります。 しかし、類似した樹形のものがどんなに数多くあっても、本来の直幹には、その派手さではなく、落ちついた品格という点で他の樹形の追随を許さぬものがあるの穐事案艀す。 というものはあります。 |